事業開始年

2020年〜現在まで

取り組む課題

孤独や生活上の困りごとを抱えていても、自分を「支援の対象」と認識していなかったり、相談窓口へ行くことにためらいを感じたりする人がいます。一方、病院や行政の窓口では、困りごとが大きくなってから出会うことも少なくありません。その原因には、心理的抵抗感、周囲への遠慮、制度への不信感などの要因があると言われています。

目指す姿

支援者が支援や相談を前面に掲げるのではなく、誰にとっても利用する理由がある日常の場所に、ケアへの入口を埋め込むことを考えました。暮らしの中で、図書館/本屋を利用していたら、専門職がいて相談ができ、必要な人や地域資源につながり、同じ趣味を持つ仲間ができたり、役割が生まれている状態を目指しました。

事業内容

兵庫県豊岡市の駅前通り商店街「大開(だいかい)通り」に、住民が本とお金を出資する形でコミュニティ図書館、本屋を開設しました。通常は図書館/本屋としてだれもが利用できる一方で、時間によってはソーシャルワーカーなどの医療福祉専門職に医療福祉にまつわる相談をすることもできます。相談のためだけに行く場所ではなく、本を借りる、買う、飲み物を飲む、棚を持つという日常の行為から、必要なときに人や地域資源へつながり、役割や居場所を得られる設計しています。本事業は、構想、場と参加の設計、運営、相談導線、調査・研究まで、寄附や助成金、一箱本棚オーナーの売上などを活用し、一貫して弊社の自主事業として行いました。

本プロジェクトでは、以下の点に特徴があります。

  1. 同じ場所に在り続ける:いつ行っても同じ場所にある常設拠点にしました。YATAI CAFÉは、地域へ「行く」ことで偶然の出会いを生みましたが、不定期の活動では、相談後の経過を見たり、関係を積み重ねたりすることに限界がありました。時間をかけて関係が育つ固定の場へ移行しました。同じ場所に戻れば、再び人や場とつながれるという安心感が生まれました。
  2. 日常の入口:本屋・図書館・喫茶として、相談の有無にかかわらず利用できるデザインにしました。困っている人だけが入る相談所では、入店した瞬間に「支援を受ける人」という立場が生まれます。だいかい文庫では、本を見る、借りる、買う、コーヒーを飲むという、困りごとと無関係な理由で入ることができます。そのため、最初から相談者になる必要がありません。まずは一人の読者や来店者として場に入り、関係ができた後に、必要であれば相談や支援が立ち上がります。その結果、支援を求めることに抵抗がある人も、相談者になる前の段階から来館しやすくなりました。
  3. 本を媒介にする:人と人の間に本や本棚を置き、会話や自己表現が間接的に始まるようにしました。直接向き合うとなにを話していいかわからなくても、媒介物があるとコミュニケーションが生まれやすいとされます。本について話すときには、まず同じ本を眺める関係から始められます。また、一箱本棚では、自分の関心や経験を直接語らなくても、選んだ本を通して、人の存在を感じることができます。感想カードなどを通じてそれが可視化されるようにデザインしました。本が第三の対象となることで、会話、関心の共有、自己表現、他者理解が自然に生まれました。
  4. 選べる関わり方:来館、読書、購入、一箱本棚オーナー、お店番など、関わり方にグラデーションを作り、その中から本人が選べるようにデザインしました。その結果、人づきあいが苦手な人も滞在できる、支援を求める前の段階から関われる、利用者が少しずつ担い手へ移行する、役割を持つことで自己効力感が生まれる、異なる関与度の人が同じ場に共存するといった結果が生まれました。
  5. 相談を暮らしの接点へひらき、社会的処方する:相談や支援を前面に掲げず、日常的な場の背後に、相談を受け止めて地域資源へつなぐ専門性を埋め込みました。本を見たり、コーヒーを飲んだり、何度か顔を合わせたりするなかで、「病院に相談するほどではない」「どこに相談すればよいか分からない」といった話が現れます。よろず相談を、制度的支援へ振り分けるだけでなく、地域の活動、人、趣味、居場所なども含めて、その人の暮らしに合う接点を一緒に考えました。この設計から、社会的処方が機能として生まれました。

数字でみるだいかい文庫

  • 2024年11月までに、17600人以上が図書館として利用し、うち1300人以上が気軽に相談し、130件の伴走支援を実施。孤独孤立、失業、メンタルヘルス、グリーフケアなどの多様なジャンルの相談に応じており、必要に応じてサービスやコミュニティにつなげています。
  • だいかい文庫の中でもお店番等を実施することで、うつ病や失業からの社会復帰の一過程となったり、孤独な来館者同士が友人になるきっかけになるなどの場にも発展しています。
  • だいかい文庫の機能は、英語論文の形でまとめており、地域住民と地域に与える影響と機能がわかっています。図書館にある「居場所」、「魅力的な空間デザイン」、「多様なアクセスの設計による参加支援」、「多様な役割の選択可能性」、「相談機能」があることで、「ソーシャルサポート」、「エンパワメント」、「相互の信頼」といった個人への影響と「世代・属性を超えたつながり形成」、「共創」、「ソーシャルインパクト」といったコミュニティへの影響につながっています。

他の地域でも応用できること

重要なのは、同じ図書館を複製することではありません。その地域で人が自然に立ち寄る用途、参加の段階、専門職との距離、地域資源への導線を読み解き、地域に合った入口で出口を設計することです。ケアと暮らしの編集社では、地域共生拠点、図書館・文化施設を活用した孤独・孤立対策、社会的処方の相談導線、居場所の運営設計について、講演・制度設計・継続的な助言を行っています。

活動レポート

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