孤独が自己責任化する社会に、
つながりという予防の処方箋を

日本では「約5割弱」の人々が孤独感を抱えているとされ、孤独の悪影響は多岐にわたります。
孤独を生み出す背景には複雑な社会的背景が存在しています。

なぜ孤独は生まれていくのか

孤立」と「孤独」は違うもの

これまでも孤立は課題に挙げられてきました。孤立は、つながりがないという客観的な状況をいいます。家族がいない、支援者とつながっていないという状況です。

一方で、孤独は、客観的にはつながりがあるように見えても、本人がつながっていない感覚を持つという主観的な痛みを指します。支援者周囲から見ると、家族や支援につながっていても、孤独感を感じている人は多くいるはずです。


孤独は「たばこ1日15本分」に相当

孤独状態による健康リスク

今、孤独は1日タバコ15本分に相当する死亡リスクと言われています1。うつ病、要介護状態、認知症、心血管疾患等のさまざまなリスクが上昇することがわかっています23。最終的に自殺につながる可能性もあります。

孤独は過小評価されている健康リスクの一つであるとして、WHOも対策に乗り出していたり、日本でも2021年に孤独孤立担当大臣が設置され、2023年には孤独・孤立対策推進法が制定され、国、自治体、支援団体、地域住民が協力する努力義務が制定され、社会全体の問題とされました。


日本では「約5割弱」の人々が孤独感を抱えている

国の調査によると、日本では約5割弱の人が孤独感を抱えていると言われています。4
その理由は、家族観の変化による単身世帯の増加や終身雇用制度の終了に伴う会社のコミュニティ機能の低下、個人主義、サービス化など、多様な原因が挙げられます。

孤独の状況(間接質問)(令和4年)
約5割弱の人々が孤独感を抱えている

内閣官房孤独・孤立対策室 人々のつながりに関する基礎調査 R4

  • 特に、20代から30代、30代女性や50代男性が孤独を抱えていると回答した割合が高い
  • 単身者、未婚、離別、失業中、低収入、経済的困難を抱えている、相談相手がいない、不安や悩みを抱えている、心身に不調を抱えているといったカテゴリーで顕著に孤独感が高い。

上記のグラフからただ単に孤独があるだけではなく、困難な社会的な状況によって、孤独が加速していることがわかります。困難な状況の人が孤独感を抱え、孤独が健康を悪化させる「孤独のデフレスパイラル状態」といえます。それは大人もこどもも変わりません。日ごろあなたの隣のにいる方も、孤立はしていなくても、孤独感を抱えているかもしれません。

孤独にまつわる困難の例

相談相手がいない

相談相手がいないとした人は、80%もの人が孤独感を抱えていると回答

健康やしごと、人間関係など、さまざまな悩みや不安を気軽に相談できる相手がいないことが、孤独感につながっていると想定されます。現在、孤独にまつわる相談先は制度上存在しません。身近な場所に気軽に相談できる場や人がいる必要性があります。

社会活動に
参加していない

社会活動に参加していない人は、56.1%もの人が孤独感を抱えていると回答

スポーツや趣味、ご近所の活動などに参加しない人は孤独感をより多く抱えます。また、高齢者では、週1回以上、趣味の活動に参加した人は、そうでない人に比べて、6年間で介護保険料が11万円も低いことがわかっています。5社会活動に参加する背中を押すようなアクションが必要になります。

背景にあるのは相談や社会活動への参加に
一歩踏み出す
ハードルの高さ

相談や社会活動への参加にハードルがあることで参加しない層が多くいるのではないかと想定されます。
孤独に関する相談先がない、相談するようなことではないのではないかという思いこみ、
相談することは恥ずかしいという自己責任論といった壁によって、
相談や活動への参加に繋がっていないのではないかと考えられます。
相談や活動に伴走するプレイヤーが少ないことも原因に挙げられます。
これらのハードルを下げるようなまちづくりが必要です。

  1. Julianna Holt-Luntad et al. Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review.Plos medicine.2010 ↩︎
  2. Murayama H, et al. . Social capital and health: a review of prospective multilevel studies. J Epidemiol. 2012;22(3):179-87 ↩︎
  3. ソーシャル・キャピタルと健康格差. 相田 潤ら. 医療と社会 Vol. 24 (2014) 号 No. 1 ページ p. 57-74
    木村美也子, 尾島俊之, 近藤克則 高齢者の生活への示唆, JAGES 研究レビュー.2020 ↩︎
  4. 内閣官房孤独・孤立対策室.人々のつながりに関する基礎調査.R4 ↩︎
  5. Saito Masashige, Kondo Naoki, Aida Jun, Saito Junko, Anezaki Hisataka, Ojima Toshiyuki, Kondo Katsunori: Differences in cumulative long-term care costs by community activities and employment: A prospective follow-up study of older Japanese adults. Int J Environ Res Public Health, 18(10): 5414 ↩︎

ケアくらが実現したいこと

住んでるだけで、気づいたら孤独が解消され、
孤独を予防するつながりができている地域社会

わたしたちが目指すのは、気づいたらウェルビーイングになっている社会です。それは、誰でもが日常的に暮らしている中で、自然につながりが生まれ、本人なりの形で社会との関わりを見つけ、本人が望むよりよい状態(ウェルビーイング)になっている社会です。

わたしたちは、孤独・孤立を個人の問題・責任にせず、社会の側が変わることが大切だと考えています。暮らしの中に制度に捉われない気軽な相談ができる場を作る。そして、気づいたら自分がやりたい活動で誰かとつながっていたといった環境をまちなかに作っていきます。相談の場、医療の場、暮らしの場と分断するのではなく、暮らしの中で相談し、つながりが作れる環境を作ることで、孤独を解消するだけではなく、孤独を予防する地域社会を作ります。